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【行政書士が解説】建設業者様必見!産業廃棄物の排出事業者責任とは?罰則・実例も徹底解説|佐世保の事例あり

佐世保市で行政書士をしている武藤です。

産業廃棄物の適正処理は、循環型社会の構築と環境保全において極めて重要な課題です。今回は、産業廃棄物の排出事業者責任について、特に建設系廃棄物に焦点を当てて解説します。長崎県佐世保市の事例も含め、違反時の罰則や防止策も詳細に検討していきます。排出事業者、処理業者、そして個々の法と環境を守る意識を習慣づけることで、美しい佐世保の環境を次世代へとつないでいきましょう。

今回は長くなってしまったので、2部に分けてお届けします。
前編、後編通してお楽しみいただけますと幸いです。

ご依頼をご検討の際は、以下からお気軽にお問い合わせください。

目次

排出事業者責任の基本概念

排出事業者責任の定義と法的根拠

「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」において、事業者の責任は明確に規定されています。
同法第3条第1項では「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と明記されています。これは産業廃棄物の排出事業者責任の最も基本的な原則です。

産業廃棄物に関する法律である廃棄物処理法では、産業廃棄物排出事業者が誰かを明確に示す詳細な定義はありませんが、事業活動に伴って廃棄物を排出した事業者が、産業廃棄物排出事業者として実質的に定義されています。

排出事業者責任の重要性

産業廃棄物の処理責任は、あくまで排出事業者にあります。この責任は、処理業者に処理を委託した場合でも軽減されることはなく、委託業者が不適正な処理を行った場合でも、「知らなかった」「委託先のやったこと」という言い訳は通用せず、排出事業者にも重い罰則が適用されます(廃掃法25条以下)。

建設系廃棄物における排出事業者責任の特徴

元請業者の一元的責任

建設工事に伴い生じる廃棄物については、法第21条の3第1項において規定があります。建設工事が数次の請負によって行われる場合、建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理について、原則元請業者を排出事業者とします。建設業では元請業者、下請業者、孫請業者等が存在し事業形態が多層化・複雑化しており、個々の廃棄物について誰が処理責任を有するかが不明確であったため、これにより、排出事業者を明確にし、排出事業者責任の徹底を図り、建設系廃棄物の不法投棄等を防止する狙いがあります(廃掃法第21条の3第1項以下)

下請業者との関係性と責任分担

元請業者は、発注者から請け負った建設工事(下請業者に行わせるものを含む)に伴い生ずる廃棄物の処理について、排出事業者として自ら適正に処理を行うか、委託基準に則って適正に処理を委託しなければなりません。
下請業者が当該廃棄物の運搬または処分を行う場合は、下請業者は産業廃棄物処理業の許可を有している必要があり、さらに元請業者からの適法な処理委託が必要です。基本的に、下請業者は産業廃棄物処理業の許可を有して元請業者から適法な委託を受けた場合にのみ廃棄物処理が可能となります。
ただし、例外規定もあります。建設工事現場内において産業廃棄物を保管する行為については、元請業者および下請負人の双方に産業廃棄物保管基準と罰則が適用されることになります。また、一定の条件下では、下請業者を排出事業者とみなし、下請業者の廃棄物として収集運搬の許可なく運搬することができる場合もあります(廃掃法第21条の3)。

排出事業者責任の具体的義務

処理義務

産業廃棄物排出事業者は、事業活動に伴って生じた廃棄物を、自らの責任で処理しなければなりません。自ら産業廃棄物を処理する場合は、産業廃棄物処理基準に従わなければなりません。また、自ら処理できない場合には、他の業者に委託できますが、委託基準に則って契約を進め、処理状況についてマニフェストを利用して管理する必要があります。

委託基準の遵守

委託基準には主に二つの重要項目があります:
①許可業者への委託義務:排出事業者は、産業廃棄物の処理を他人に委託する場合には、許可を持つ業者に委託しなければなりません。産業廃棄物の収集運搬や処理を行う業者は、その事業を行うために都道府県知事等の許可を得ていなければなりません。(廃掃法第12条第5項および第12条第6項)

②委託契約書の作成義務:委託の際には、必ず書面で契約を結ぶ必要があります。さらに委託契約には2社契約の原則があり、運搬と処理を別の業者に委託する場合、それぞれと直接の委託契約を結ばなければなりません(廃棄物処理法第12条第5項・第6項、廃掃法施行令第6条の2第4項)
委託基準違反は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります(廃掃法第26条第1号)。

マニフェスト制度と管理義務

産業廃棄物排出事業者は、産業廃棄物の処理を処理業者に委託する場合、管理票(産廃マニフェスト)を交付しなければなりません(廃掃法法第12条の3第1項)。
さらに、交付したマニフェストは5年間保存しておく必要があり、年一回マニフェスト交付等の状況について、都道府県知事等へ報告が必要で、これを怠った場合罰則が適用される可能性があります。マニフェストの不交付や虚偽記載があった場合は、廃棄物を適切に処理していても、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます(廃掃法第27条の2第1号、5号)。

以前、解体工事業をさせているお客様と電子マニフェストの導入に関してお話した際、年に一回の佐世保市への報告がなかったことが発覚したときはヒヤッとしました。「うちもうっかりしてた!」という方は、まずは行政機関に相談してみてください。
うちはずっとこれでやってるから大丈夫!というかたも、これを機に一度見直してみてください。

違反事例と罰則

主な違反行為のパターン

産業廃棄物の排出事業者による主な違反行為には以下のようなものがあります。

  1. 産業廃棄物の不法投棄:自ら投棄したり、委託業者に投棄の指示をした場合だけでなく、委託した処理業者が不法投棄を行なった場合も、排出事業者に責任が問われます(廃掃法第3条第1項、第11条第1項、第12条第5~7項など)。
  2. 産廃マニフェストの不交付、法定記載事項の記入漏れ、虚偽記載:産業廃棄物を処理するにあたって、マニフェストは必ず交付することが義務付けられています。また、保管期間は5年で、年に1度、佐世保市への報告が義務図けられています(廃掃法第12条の3第1項、施行規則第8条の21、法第12条の3第6項など)。
  3. 契約書の作成義務違反、許可証の添付漏れ:処理業者とは事前に委託契約を交わさなければなりません。適切な契約を交わさずに依頼することは違反行為となります(廃掃法第12条第6項、施行令第6条の2第4項、施行規則第8条の4の2など)。
  4. 無許可業者への委託・処理:処理委託する廃棄物の処分・収集運搬の許可がない業者へは依頼してはいけません。また、許可書の有効期限が切れていないか、委託する廃棄物が処理業者の取り扱い許可の範囲に含まれているかも必ず確認する必要があります(廃掃法第12条第5項、法第12条第6項、施行令第6条の2第4項、)。
  5. 特別管理産業廃棄物の管理責任者設置義務違反:特別管理産業廃棄物を取り扱う事業者は、適切な管理のために管理責任者を設置することが義務付けられています(廃掃法第12条の2第8項、法第30条第5項、廃掃法施行規則第8条の17)。

法定罰則と刑事罰

産業廃棄物排出事業者は、処理を委託しても責任を問われる場合があります。処理業者と適切な内容で委託契約を結んでいなかったり、マニフェストの交付や保存をしていなかったりなど、主に自社に責任がある場合は、委託基準違反やマニフェスト交付義務違反等により懲役刑・罰金刑を問われることがあります。
違反行為に対する主な罰則は以下の通りです。

  1. 産業廃棄物の不法投棄:5年以下の懲役または1,000万円の罰金、またはその両方。法人に対しては3億円以下の罰金(廃掃法第25条第6号、同法第32条)。
  2. 産廃マニフェストの不交付等:1年以下の懲役または100万円以下の罰金(廃掃法第27条の2第1号)。
  3. 契約書の作成義務違反等:3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方(廃掃法第26条第1号)。
  4. 無許可業者への委託・処理:5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方(廃掃法第25条第6号)。
  5. 特別管理産業廃棄物の管理責任者設置義務違反:30万円以下の罰金(廃掃法第30条第5号)。



また、長崎市では「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」違反で罰金刑を受けたため、法第7条第5項第4号ニ(欠格要件)に該当し、許可が取り消しになった事例が存在します。罰金を払って終わりではなく、両罰規定の適用や、許可の取り消しなど、ドミノ倒しのように事業が立ち行かなくなるのが怖いのです。

行政処分の種類

違反があった場合の行政処分としては、改善命令、措置命令、許可取消などがあります(廃掃法第14条の3の2第1項、法第19条の5、法第19条の8など)。
例えば、過去に長崎県佐世保市の事例では、A社に対して産業廃棄物処分業及び産業廃棄物処理施設の許可取消処分が行われた後、A社及び代表取締役らに対して措置命令が発出されています。

佐世保市最終処分場事案の詳細

長崎県佐世保市では、産業廃棄物最終処分場に関する重大な不適正処理事案が発生しました。
A社は昭和63年11月に産業廃棄物処分業の許可を受け、産業廃棄物の最終処分を行っていましたが、平成12年7月に最終処分場北側区域の法面が崩壊しました。A社は崩壊部分の復旧工事や丸太杭による崩落防止措置などの応急対策は行ったものの、抜本的な対策を講じることはありませんでした。
その後も、平成17年9月に台風及び地震の影響による廃棄物層の崩落、平成18年4月に降雨の影響による法面の小規模な亀裂や崩落が発生するなど、問題が続きました。
市はA社に対して最終処分場の残余容量に係る報告を求め、平成17年7月に許可容量の超過を確認したことから、平成18年1月に「廃棄物の撤去及び河川に飛散した廃棄物の撤去」を求める勧告書を発出しました。その後も複数回の文書勧告を行いましたが、改善されることはありませんでした。
結果として、平成23年8月に産業廃棄物処分業及び産業廃棄物処理施設の許可取消処分が行われ、平成24年1月にA社及び代表取締役らに対して措置命令が発出されました。しかし、着手期限を過ぎても是正措置が取られなかったため、行政代執行による支障の除去が行われました。この事案では、埋立面積が約16,297m²、埋立量が約111,318m³に達し、許可された面積(5,629m²)と容量(37,000m³)を大幅に超過していました。行政代執行費用は181,021,097円にのぼり、環境省の支援資金134,316,000円が投入されました。

違反防止のための実践的対策

ここまで、排出事業者なら絶対知っておきたい、適切な廃棄物処理の気を付けるポイントを法的観点でついてお伝えしてきました。では、以上のことを踏まえて具体的にとるアクションは何なのでしょうか?

後半に続きます。

お問い合わせ以下から可能です!

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この記事を書いた人

長崎県佐世保市で建設業許可、産廃業許可をメインに取り扱う行政書士です。

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