「建設業許可を取りたいけど、技術者の要件が複雑でよくわからない…」
「昔は専任技術者って言ってたのに、名前が変わって何が違うの?」
「うちの会社の社員、誰が技術者になれるんだろう?」
「将来は大きな工事も元請でやりたいけど、何から準備すればいいんだ?」
日々現場で汗を流し、会社を切り盛りされている建設業の社長なら、一度はこうした疑問や不安に直面したことがあるのではないでしょうか。特に、分厚い手引きや法律の条文を読んでも、専門用語ばかりで眠くなってしまう…というお気持ち、痛いほどよくわかります。
この記事は、そんな多忙を極める社長のために、建設業許可の心臓部とも言える「営業所技術者」について、どこよりも丁寧に、そして圧倒的にわかりやすく解説することをお約束します。
法律の話は最低限に、「つまり、どういうこと?」「社長として、何をすればいいの?」という視点を大切に、徹底的に深掘りします。
- これから初めて建設業許可の取得を目指す事業主様
- 「専任技術者」が「営業所技術者」に変わった背景と、実務への影響を知りたい方
- 社員の中から誰が技術者の条件を満たすのか、具体的に確認したい方
- 現在は「一般」だが、将来的に公共工事や大規模工事に挑戦するため「特定」へのステップアップを視野に入れている社長様
- 自社の技術者要件について、明確な答えを得られず困っている方
- 建設業許可に絶対に欠かせない「営業所技術者」の本当の役割が、スッキリ腹落ちします。
- 「一般」と「特定」、2種類の営業所技術者の違いが、まるで霧が晴れるように明確になります。
- 自社に必要な技術者の条件(どんな資格や経験が必要か)を、具体的に特定できます。
- 許可の取得や維持、そして未来の事業拡大のために、”今すぐ”何をすべきかという具体的なアクションプランが見えてきます。
第1章:そもそも「営業所技術者」って何者?(旧:専任技術者)
まず、すべての基本となる一番大事なことからお話しします。
これまで建設業界で長く「専任技術者(せんぎ)」と呼ばれてきた役職は、令和6年12月13日に施行された建設業法改正により、「営業所技術者」という新しい名称に変わりました。
「えっ、法律が変わって、また面倒なことが増えるの?」と心配されたかもしれませんが、ご安心ください。役割や中身が根底から覆るような大きな変更ではありません。これは、「営業所に専らその職務に従事する技術者」という、その名の通りの役割をよりストレートに、分かりやすくするための名称変更なのです。
では、その「営業所技術者」の具体的な役割とは何でしょうか?
一言で表現するならば、「各営業所の“技術的な大黒柱”であり、信頼の証」です。
現場でヘルメットを被って作業する「現場監督」とは、似ているようで全く役割が異なります。営業所技術者は、原則として工事現場に出ることはありません。その名の通り、営業所に常勤し、専任で以下の重要な業務を担います。
- 見積もりの技術的チェック:工事内容に対して、見積もりの金額や工法が妥当か、専門家の目で判断します。
- 請負契約の適正な締結:契約書に記載された工事内容や仕様が、法的に、そして技術的に問題ないかを確認します。不適切な契約を結んでしまうリスクから会社を守る防波堤の役割です。
- 発注者との技術的な窓口:お客様や元請会社から工事の技術的な仕様について質問があった際に、的確に回答し、信頼関係を築きます。
- 工事全体の技術的管理:請け負った工事が、契約通りに適正に施工されるよう、技術的な観点から管理・監督します
このように、営業所技術者は「工事を受注する段階」から深く関与し、その会社の技術力を保証する、まさに”看板”となる存在なのです。

建設業法では、建設業許可を受けた営業所には、この営業所技術者を必ず1名以上配置することが義務付けられています(建設業法第7条第2号、第15条第2号)。もし、この技術者が退職などで不在になってしまうと、許可の維持ができなくなり、最悪の場合、許可取り消しという事態にもなりかねません。
それほどまでに、会社の根幹を支える重要なポジションであると、まずはご理解ください。
第2章:あなたの会社はどっち?「一般」と「特定」の大きな分かれ道
さて、営業所技術者の重要性がわかったところで、次のステップに進みましょう。
営業所技術者には、会社の許可の種類に応じて、2つのレベルが存在します。
- 一般営業所技術者:ほとんどの建設業者様に関わる、スタンダードな技術者。
- 特定営業所技術者:大きな元請工事を扱う会社に求められる、ハイレベルな技術者。
この2つの違いを理解することが、自社の現状を把握し、未来の戦略を立てる上で極めて重要です。そして、その分かれ道は、たった一つのシンプルな基準で決まります。
それは、「元請として受注した1件の工事で、下請けに出す工事の合計金額」です。
【会社の未来を決める自己診断】
質問:あなたの会社が元請として受注した1件の工事で、下請業者さんへ発注する工事代金の合計額は、以下の金額を超えますか?
建築一式工事以外の場合 → 5,000万円
建築一式工事の場合 → 8,000万円
(※消費税込みの金額です)
いかがでしたでしょうか?
多くの建設会社様は、まず「一般建設業許可」からスタートします。事業が軌道に乗り、より大きな元請工事を扱うようになると「特定建設業許可」へのステップアップが必要になってくるのです。
なぜ「特定」はこんなに厳しい基準なのでしょうか?
それは、多額の下請契約を束ねる元請業者には、それだけ大きな社会的責任が伴うからです。万が一、元請が倒産したりすると、その下で働く多くの下請業者さんや職人さんたちが路頭に迷ってしまいます。また、大規模な工事では、施工ミスが大きな事故につながる危険性も高まります。
そのため、国は「特定建設業許可」を与える会社に対して、「下請業者を保護できるだけの強固な財産的基礎」と、「大規模で複雑な工事を管理できるだけの高度な技術力」を厳しく求めるのです。その「高度な技術力」の証明こそが、『特定営業所技術者』というわけです。
まずは自社が「一般」なのか「特定」なのか、この分かれ道をしっかりと認識することが、全ての始まりです。
第3章:【徹底解説】一般営業所技術者になるための3つのルート
ここからは、より具体的に「どうすれば営業所技術者になれるのか?」という核心部分に迫ります。まずは、ほとんどの会社様が対象となる「一般営業所技術者」からです。
社長様ご自身や、役員、社員の方々の経歴を思い浮かべながら読み進めてみてください。以下の3つのルートのうち、どれか1つでもクリアできる方がいれば、その方は一般営業所技術者になる資格があります。
ルート①:国家資格を持っている【一番の近道】
これが最もシンプルで強力なルートです。許可を取りたい建設業種に対応した国家資格や技術検定をお持ちの方は、実務経験の年数を問わず、すぐに技術者になることができます。
建設業29業種それぞれに、対象となる資格が細かく定められています。2級の資格や、技能検定(1級、または2級で合格後3年以上の実務経験)でも認められるケースが多くありますので、「うちの社員が持ってるこの資格はどうだろう?」と思ったら、ぜひ専門家にご確認ください。

ルート②:学歴 + 実務経験がある【学んだ知識を現場で活かす】
国家資格は持っていなくても、専門の学校で学んだ知識と、現場での経験を組み合わせることで技術者として認められるルートです。ポイントは「指定学科」を卒業していることです。
「指定学科」とは、建設業法施行規則というルールで定められた、許可を取りたい業種に関連する学科のことです。例えば、土木工事業なら「土木工学」、建築工事業なら「建築学」に関する学科がこれにあたります。
《必要な学歴と実務経験年数》
- 大学 または 高等専門学校(高専)の指定学科を卒業 → 3年以上の実務経験
- 高等学校の指定学科を卒業 → 5年以上の実務経験
このルートを目指す場合は、卒業証明書と、実務経験を証明する書類(当時の契約書や注文書など)が必要になります。
技術検定の1次試験合格者も有利に!
令和5年7月の法改正により、技術検定の1次試験に合格した方は、実務経験年数の面で優遇されるようになりました。
- 1級の1次検定合格者:大学の指定学科卒業者と同じ扱い(合格後3年の実務経験でOK)
- 2級の1次検定合格者:高校の指定学科卒業者と同じ扱い(合格後5年の実務経験でOK)
これにより、若手技術者の方がより早く営業所技術者になる道が開かれました。
ルート③:とにかく実務経験が長い【たたき上げのプロフェッショナル】
「資格も学歴も関係ない。俺は現場一筋でやってきたんだ!」という、たたき上げの社長様やベテラン職人さんのためのルートです。
- 許可を取りたい業種について、10年以上の実務経験があること
この「10年」という経験は、非常に価値のあるものです。しかし、許可申請の際には、この10年間の経験を客観的な書類で証明するという、最も高いハードルが待ち構えています。
証明のためには、1年につき1件程度、その工事を確かに行っていたことがわかる過去の契約書、注文書、請求書などが必要になります。10年以上前の書類をすべて保管されている会社様は多くありません。また、証明する期間に空白があってはいけないなど、細かなルールも存在します。
この実務経験の証明こそ、我々行政書士が最も専門性を発揮できる部分です。「書類が足りないかもしれない…」と諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。
以上3つのルート、いかがでしたでしょうか。まずはこの「一般」の基準をクリアすることが、建設業許可取得の第一歩です。
第4章:【上級編】特定営業所技術者への道は、なぜ険しいのか?
さて、ここからは「特定建設業許可」を目指す社長様向けの、ハイレベルな内容に入っていきます。「一般」の要件と比べて、なぜ「特定」はこれほどまでにハードルが高いのか、その理由と具体的な条件を解き明かしていきましょう。
前述の通り、特定営業所技術者は、数千万円規模の下請契約を管理し、大規模で複雑な工事全体の技術的な責任を負う、まさに”司令塔”です。そのため、求められる知識、経験、そして資格のレベルが格段に上がります。
原則:「1級の国家資格」であること
特定営業所技術者の要件、その大原則は非常にシンプルです。
許可を受けたい業種に対応した、1級の国家資格またはそれに準ずる資格(技術士、一級建築士など)を保有していること。
「一般」では認められた2級資格は、原則として「特定」では通用しません。例えば、2級土木施工管理技士の方が土木工事業の一般営業所技術者になることはできますが、特定営業所技術者になることはできないのです。
この「特定=1級」という明確な線引きは、大規模工事に求められる高度な技術力と、元請としての重い社会的責任を担保するために設けられています。
例外:超エリート級の「指導監督的実務経験」
1級資格がなくても、特定営業所技術者になれる道が、実は一つだけ残されています。しかし、これは非常に狭き門であり、「たたき上げのスーパーゼネコン級の現場監督」をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。

その条件とは、以下の2つのステップを両方ともクリアすることです。
まず大前提として、前章で解説した「一般営業所技術者」になるための3つのルート(資格、学歴+経験、10年経験)のいずれかを満たしている必要があります。
その上で、さらに以下のすべての条件を満たす特別な経験が必要です。
- 立場:元請の立場で受注した工事であること(下請での経験はカウントされません)
- 金額:請負代金の額が4,500万円以上の工事であること
- 役職:その工事で、工事現場主任者や現場監督など、技術面を総合的に指導監督する立場であったこと
- 期間:上記の経験を、合計で2年以上積んでいること
この経験を証明するためには、大規模工事の元請としての契約書や施工体系図など、極めて客観性の高い資料を揃える必要があります。現実的には、このルートで特定営業所技術者になるのは非常に困難と言えるでしょう。
最大の落とし穴、「指定建設業」のワナ
特定建設業許可を目指す上で、社長様が絶対に知っておかなければならない、最重要のルールがあります。それが「指定建設業」の存在です。
国は、建設業29業種の中でも、特に工事の規模が大きく、技術の総合性が求められ、社会的な影響も大きいと判断した7つの業種を「指定建設業」として特別に定めています。
指定建設業の7業種
そして、ここからが本題です。
この7つの「指定建設業」で特定建設業許可を取得する場合、先ほど説明した「指導監督的実務経験」によるルートは認められません。「うちは建築一式で10年以上やってきたベテランだから、実務経験で特定の許可が取れるだろう」と考えていると、この「指定建設業のワナ」にはまってしまい、計画が頓挫してしまう可能性があります。自社が目指す業種が、この7つに含まれていないか、必ずご確認ください。
第5章:まとめ:社長が今すぐやるべきことと、未来への備え
ここまで、営業所技術者の「一般」と「特定」の違いについて、様々な角度から解説してきました。最後に、この知識を自社の経営に活かすために、社長様が”今すぐ”取り組むべき具体的なアクションプランを3つ提案します。
アクションプラン①:【現状把握】自社の「技術者ポテンシャル」を棚卸しする
まずは、会社の現状を正確に把握することから始めましょう。
役員、社員全員について、以下の情報を一覧表にまとめてみることをお勧めします。
- 保有資格:資格の正式名称、取得年月日、1級か2級か
- 最終学歴:学校名、学部・学科名、卒業年月日
- 実務経験:担当してきた業種、その期間、役職など
この「技術者台帳」を作成することで、「誰が」「どの業種の」「どのレベル(一般/特定)の」営業所技術者になれる可能性があるのか、会社全体の技術力が可視化されます。これは、急な退職者が出た際のリスク管理にも繋がります。
アクションプラン②:【未来設計】事業計画と連動した「人材育成戦略」を立てる
現状が把握できたら、次は未来を見据えます。
「3年後には公共工事に参入したい」「5年後には特定建設業許可を取得して、元請としての地位を確立したい」といった事業計画があるならば、それに合わせて技術者の育成計画を立てる必要があります。
- 誰に?:将来を期待する若手社員や、意欲のある中堅社員
- 何の資格を?:事業計画に必要な業種の、1級施工管理技士などの資格
- どうやって?:資格取得支援制度(受験費用や講習費用の補助など)を導入する
優秀な人材は、ただ待っていても育ちません。社長が明確なビジョンを示し、会社として投資することで、社員のモチベーションは上がり、未来の特定営業所技術者が育っていくのです。

アクションプラン③:【リスク管理】専門家を「参謀」として活用する
建設業許可は、一度取ったら終わりではありません。5年ごとの更新はもちろん、役員の変更や技術者の交代など、様々な場面で手続きが必要になります。そして、その要件は法改正によって常に変化しています。
- 「この社員の経験で、本当に10年分を証明できるだろうか?」
- 「新しい営業所を出す場合、技術者はどうすればいい?」
- 「兼務のルールが緩和されたと聞いたけど、うちの会社でも使える?」
こうした疑問や不安が生じた際に、すぐに相談できる専門家がいることは、社長にとって大きな安心材料となります。私たち行政書士は、法律の専門家であると同時に、建設業者様の事業成長をサポートする「外部の経営参謀」であると考えています。
最後に:あなたの会社の”未来”を、私たちと一緒に作りませんか?
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
営業所技術者の制度は複雑ですが、それは建設業という仕事が、人々の生活と安全を支える、誇り高く、そして責任の重い仕事であることの裏返しです。
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